ミニマリスト設計士が助言する浴室仕様の工夫
「台所」に引き続き、今回のテーマは「浴室」です。住まいにおいて毎日使用される部屋が「寝室」と「トイレ」と「浴室」ではないでしょうか。毎日使う「浴室」ですが、ある日ハウスメーカーや工務店にショールームに案内されてよくわからず仕様が決まってしまった。もっとちゃんと検討したかったな。という体験談を耳にします。この記事では「浴室」の基礎知識と仕様選定の工夫、注意点を設計歴20年以上のミニマリスト設計士目線で解説します。いま現在、住まいづくり中の方も、これから住まいづくりを検討中の方にも読んでおいて損のない内容となっています。是非最後までお読みください。それでは始めましょう。
皆さん、こんにちは。藏岡です。今回のテーマは「浴室」です。最初に結論を申し上げると浴室はユニットバスを選びましょう。基本姿勢は標準でも充分という考え方。その上で本当に必要な機能を選び、余計なオプションや付属品を選ばない様にこの記事を読んで役たてて頂ければと思います。
浴室には3タイプの方式がある
①在来浴室
古くからある床と壁がタイルのお風呂です。浴槽はFRP浴槽で浴槽用のカラン(蛇口)がついている事がほとんどです。ご実家がこのタイプの人もいるのではないのでしょうか?現在、在来浴室にしようとすると手間がかかり、様々な種類の職人さんにつくってもらう事になるため費用が高額になります。現実的には富裕層の為の浴室になりつつあると感じています。
②ユニットバス
現在、一番普及しているお風呂形式です。ハウスメーカーや工務店で何も指定しないとほぼ100%ユニットバスになります。在来浴室の様に現場でゼロから施工するのではなく、工場でユニット化されたパーツを組み立てる形式です。工期が短く、設置コストが低く、サイズバリエーションが豊富です。藏岡は1616サイズ(一坪サイズ)を提案することが多いです。
パナソニック株式会社 オフローラより抜粋
③ハーフユニットバス
こだわりの在来浴室派と一般的なユニットバス派の中間に位置するのがハーフユニットバスです。床から浴槽までがユニットバス形式で工場生産品。そこから上の壁と天井が在来浴室の様にガラス壁やタイル壁等にしてデザイン性を高める形式です。見た目は非常に良いのですがユニットバスより高価で、建築の納まりが難しく採用に至らない事が多い印象です。ドアのすき間からシャワーの水しぶきが漏れるケースもあります。
以上の3タイプから藏岡はユニットバスを選択しています。既製品を上手く組み合わせて費用対効果を高める姿勢は変わりません。次にユニットバス仕様で私が選ばない仕様をお伝えします。憧れや思い込みにしばられず、あなたらしい仕様選定をしましょう。
ユニットバス仕様不採用5選
①アクセント壁パネル・暗い床と浴槽
暗い色味の床や浴槽はショールームに行くと目新しさとシックな雰囲気に見えて選んでしまいがち。でも石鹸汚れが目立つので入浴後毎回掃除できる人以外は選ばない方が無難です。壁は明るめのホワイト・ベージュ・グレー等の色味で揃える。天井は色のバリエーション少ないのでホワイトで統一すると失敗は少ないです。拘りたいのは理解できますがここはシンプルでよいのでは・・?他の場面で拘りましょう。と促します。
②浴室乾燥暖房機
設置すると便利そうですよね、浴室乾燥暖房機。以前設計した自宅でも採用しましたが使った機会がほとんどありませんでした。衣類は原則的に外干しでしたし、雨の日は洗面所の一角に服をかけ、除湿器を使って乾かしました。冬場のヒートショック対策には有効ですが、浴槽に浸かれば温かいので使用時間が極端に短い。総合的に考えて費用対効果が弱いと判断しています。浴室乾燥暖房機は不要でも換気排気用の換気扇は絶対つけましょう。
③備品棚・鏡・手摺
これは絶対にお薦め。備品棚・鏡・手摺は発注時はつけない。ほぼ100%標準のユニットバス仕様にシャンプーやボディソープを置く棚がついています。この棚、実はヌメリや掃除のしにくさから後から外される事が多いんです。でも棚は取り外しても壁に取付金具がチョコっと残ってしまう・・。これは非常に不格好。ですからこうなることを見越して最初から潔く何もつけない!
その代わりに登場するのがマグネット式の棚。ほとんどのユニットバスの場合、壁にマグネットが取り付けられることができます。見た目もシンプルで使い勝手がよい製品が沢山安価で販売されているので是非検討してみてください。
山崎実業 バスルームラックミストワイド
④オーバーヘッドシャワー
設計業務を長い間しているとオーバーヘッドシャワーを要望される方が以外と多い事に気づきました。高級ホテルなどでよく見かけるオーバーヘッドシャワー。見た目が良くて上からシャワーを浴びるの気持ちよさそう。でも現実にはこちらも段々使われなくなります。藏岡も以前の自宅で設置しましたが・・。カランを操作して浴びようとすると大抵冷たい水を頭から浴びてビックリする事になります。真冬に浴びると心臓が止まりそうで悪いです。水を避けて操作すればよいと考える人もいますが、そこまで手間かけてまで浴びるものではありません。これは一年中暑い国で採用される設備だなぁと感じています。
⑤テレビ
これはすでに過去の物なのでは・・とさえ思ってしまいます。スマートフォンがない時代に浴室でテレビが見れる!というのはちょっとした贅沢だったのかもしれません。私はテレビをほとんど見ないのでこの気持ちも理解が難しいのですが・・。時代は変わって日本国民の多くがスマートフォンを持っています。わざわざユニットバスの壁に穴をあけてテレビをはめ込まなくても、100円均一ショップで売っている防水ケースにスマートフォンを入れれば視聴できますよね。
重要!ユニットバス必須仕様3選
①断熱性能・保温性能
あまり知られていない事実ですが、実は年間で交通事故に遭ってしまい亡くなる方よりも冬場に浴室等で寒暖差によるヒートショックによって亡くなる方のほうが多い事がわかっています。これは古い日本の家は冬場、居間以外は寒く外と大差ない状況であることが起因している考えられます。その為、浴室においてもちゃんと断熱材を壁に施工し、ユニットバスの浴槽・浴室床には断熱が施されたものを選びましょう。断熱浴槽や魔法瓶浴槽といった名称で呼ばれている事が多いです。また風呂蓋は浴槽湯温度の降下を緩やかにします。共働き世帯等、浴室利用時間がバラバラの方は是非取り入れましょう。
②清掃性能
浴室の役割は身体を綺麗にして、一日の疲れをとる事ではないでしょうか。交感神経、副交感神経を切り替え、大切な睡眠にむけたスイッチを入れます。
浴室の壁や床には人間の皮脂とシャンプー・石鹸泡が混ざった洗い汚れが溜まってきます。毎日清掃したいのですがそれも大変ですよね。その場合は上の不採用仕様5選を参考にしてコストダウンした分を使って「汚れがつきにくい素材」「汚れが落ちやすい素材」にグレードアップしてみてはどうでしょうか。具体的にはFRP浴槽を人造大理石浴槽にしたり、床を樹脂製からタイル床に変更することです。
床色はグレーやライトグレーがかっこよいのですが水垢が気になる事があります。メーカーにより異なりますがベージュ等汚れが気になりにくい色がありますので製造メーカーに聞いてみましょう。
また浴槽と洗い場床の間にある壁部分であるエプロンパネル。ここの裏側の掃除が厄介です。力の弱い方でも掃除が容易にできるかなどショールームで確認しておきましょう。
③換気性能
浴室での悩みのタネの一つがカビ。カビ発生原因は「栄養」「酸素」「水分」「温度」と言われています。この内一つでも無くす事ができれば発生を軽減できます。そこで有効なのが換気です。換気により湯気=水分を素早く室外に排出できればカビ発生を抑えられます。
また最近は断熱設計上、防犯対策上の弱点になることから浴室窓を設置しない事が多くなってきました。その為、浴室換気が換気扇頼みになっているのです。換気扇がついてさえいればOKではなく、有効換気風量や排気ダクトの短さ(ダクトが長いと風量が落ちる為)をチェックしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「浴室」を取り上げました。結論はユニットバスが総合的に判断して最適解。ただし、不必要・過剰な仕様・オプションがあるので注意したいところです。自分の生活様式を改めて見直す、またはどういった生活様式で暮らしていきたいか、ご家族で話し合った上で仕様選択できるとよいと思います。
この記事以外にも住まいの水廻り設備について書いた記事があります。是非ご一読下さい。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。次の記事でお会いしましょう。藏岡三郎でした。