住まいの設計

【ミニマリスト設計士が解説】小さな家の魅力6選と注意点

藏岡 三郎

ミニマリズムの考え方の一つに「手放すことで本当に必要なことに集中できる」というものがあります。皆さんは周囲の人やメディアによって形成される価値観に振り回されていると感じたことはないでしょうか?私も以前はそういった価値観に縛られていましたが、離婚を経験し自分らしい価値観を持つことができました。住まいで言うと「広い家がいい家」「最新設備じゃないとダメ」といった価値観でしょうか。この記事を読むとミニマリスト設計士が辿りついた「小さな家」の6つのを魅力・メリットを知る事ができます。あなたらしい価値観に出会うヒントにもなる内容になっています。最後まで是非読んでくださいね。

藏岡 三郎
藏岡 三郎

小さな家の魅力は暮らしに関わる事2点とお金に関わる事4点の合計6点あります。それではいってみましょう。

筆者紹介はコチラからお読み頂けます。

小さな家の魅力6選

建設コストを抑えられる

小さな家は文字通り面積が小さな家です。国土交通省統計によると令和4年度一戸建て住宅の全国平均面積は31.9坪です。私が設計しているミニマムハウスは24坪程度。7.9坪ほど小さい計算になります。同統計によれば全国一戸建て住宅建設コストは2019年から60万円/坪を超え現在進行形で上昇しています。(2022年時点で62.9万円)この流れが続くと予想し65万円/坪と仮定すると、比較対象が同仕様の場合はミニマムハウスと平均的な一戸建て住宅では513.5万円の差額が生まれることになります。住宅ローン利息分を考慮するとその差額はさらに広がります。この金額を別のコト(家族との体験や教育)に使うことができれば自らの幸せに近づくのではないかと私は思います。

家庭内コミュニケーションが増える

これは私の実体験からのお話です。離婚する前、私は自ら設計した大きな家に住んでいました。リビングとダイニングキッチンが明確に分かれている間取りに住んでいたんですね。決して間取りが100%の原因ではありませんが、別々の部屋で過ごす時間が増えると少しづつ疎遠になってくるんです。家族といえど顔をあわせて話をしないとわからないことだらけですよね。再婚後の私の毎日の楽しみは妻と一緒におしゃべりしながら夕食をとることなんです。小さな家は家族間の距離が近く、基本的に空間が繋がっているので気配を感じることができます。自然に会話が生まれ、日々の変化に気づき思いやりをもって暮らすことができると考えています。

掃除や片付けが楽

突然、現実的な話になりましたが「お掃除」です。私達夫婦は現在60㎡ほどのアパートで暮らしています。小さな家の掃除、本当に楽です。以前の大きな家は掃除機がけだけで一苦労でしたが、現在は毎朝数分で完了。ミニマリストは物が少ない為さらに楽で、いつも綺麗なので気持ちがいいものです。皆さんもご存知の通り、日々の生活をしているとどこかしら汚れたり散らかったりしますよね。大きな家時代はいつもどこか掃除しなきゃ、片付けしなかきゃと追われていましたが、今はいつも綺麗にそして心に余裕を持って暮らせています。単純ですがこのメリットは暮らしにおいて大きなメリットですよね。

土地の制約が少ない

小さな家は小さな土地にも建築することができます。どんな土地にも・・とまではいきませんがある程度の広さの土地でしたら建築可能。土地選択の自由度が高いため土地購入価格を抑えることが期待できます。

ランニングコストを抑えられる

税金

住まいに関する税金には不動産取得税や固定資産税、都市計画税等があります。これらは税金額は建物評価額に決まった税率をかけて算出されます。ではこの建物評価額はどの様にして決まるのでしょうか?実は行政職員(市や県)が建物を調査しに来て評価されます。建物の大きさ以外にも高級建材(石やタイル等)の使用範囲から算出されます。小さな家は面積が小さく、ミニマムでシンプルなつくりの為、評価額が一般的な住まいと比べて低くなります。また長期優良住宅認定を取得できる性能があるため、住宅ローン控除や所得税の特別税額控除、登録免許税などにおいて様々な特例や優遇措置を受けることができます。

光熱費

光熱費をは電気代やガス代など生活する為に必要なエネルギーを購入する費用です。大きな家と小さな家を想像してみてください。どちらがエアコン代がかかるでしょうか。どちらが沢山照明器具がついているでしょうか。2022年後半から光熱費が高騰し、家計を圧迫しているという報道が多くありましたね。光熱費は暮らしやすさに直結する費用です。住まいが完成後に取り組む節約と共に、完成前から光熱費を抑える仕組みが小さな家という選択肢です。

メンテナンス費用

住まいは新築後10年のサイクルでメンテナンスが必要になります。主に風雨にさらされ劣化が進みやすい屋根や外壁の補修工事が該当します。この工事には数十万円から百数十万円のコストがかかります。その他に室内で水が関わる部屋(浴室やトイレ等)はメンテナンスが必要になる事が多い印象ですね。湿気などで劣化が進みやすいのです。この時も小さな家であれば塗り替える面積が小さくトイレも一か所の為、費用を抑えることができます。

本当に必要な機能にコストをかけられる

最後のメリットです。冒頭にも書きましたがミニマリズムの考え方の一つに「手放すことで本当に必要なことに集中できる」というものがあります。「狭い家なんてヤダ」「どうせ住みにくい」といった周囲の意見に流されず自分の軸を持つと、本当に必要なことを選択できます。私の場合は下記の3つの機能でした。

断熱・気密性能

建物の基本性能は様々なものがありますが、私が重視しているのは「耐震性能」「防水性能」「断熱・気密性能」の3つです。この内「断熱・気密性能」はコストをかけると性能が著しく向上できます。この性能は以下の二つを支える土台の様な性能です。

全館空調システム

小さな家は大きな吹抜けがあり、空気が循環しやすい間取りにする予定です。この間取りと全館空調の相性はよく、家庭用エアコン2台で室内全てを冷暖房できます。「断熱・気密性能」が高いので一度適温にできると少ないエネルギーで快適に暮らすことが可能です。

太陽光発電システム

そして全館空調システムを稼働し続ける為に太陽光発電システムを導入します。余った電気は蓄電池(電気自動車)に充電しておきます。さらにパネルが屋根の上に設置されるので屋根の断熱性能の向上にも繋がります。

小さな家の注意点

設計が難しい

設計の難易度は確実に上がります。また本当に大丈夫かな・・狭くないかな?と不安になる方もいらっしゃるでしょう。その不安を払拭するプレゼンテーション・説明が大切です。設計のポイントを1つ挙げると視線の抜けや縦の空間等広がりを持たせる部分とコンパクトにまとめる部分とのメリハリが重要です。またお施主さま自身が住まいにあわせる。歩み寄るような意識が必要になります。自宅の詳しい設計内容・間取りについては別の記事で解説したいと思います。

収納が少ない

住まいの収納が少ない事は事実ですね。しかし、いつもよりも細かく要望を聞き取り、小屋裏収納やデッドスペースを工夫して収納スペースを増やすことは可能です。実は私達は夫婦でミニマリストなのでそもそもモノが増えにくいんです。この注意点はモノが多い方には受け入れがたい真実かもしれません。いかがでしょうか。これを機会にみなさんもプチ断捨離してみませんか?

将来の変化に対応しにくい

小さな家なので部屋の使い方は限定的になりがちです。こども部屋をざっくり作って後で仕切る。といったことはできません。しかし、私達はそもそもこどもは将来巣立つ存在であり個室が必要なのは数年だけという考え方のため割り切っていますね。

まとめ

「自分らしい幸せな暮らし」は住まいという箱の中で生まれます。住まいが大きくて格好よければ幸せになれるわけではありません。それは私が痛いほど理解しています。私達夫婦の価値観にあった小さな家のメリットはいかがでしたでしょうか。暮らし易さとコストのメリットがありましたね。一方で注意点も3つほどありました。ミニハウスに対する理解が深まったのではないでしょうか。私達夫婦は長い時間話し合ってこの価値観に至りました。皆さんには皆さんの価値観があり、それが住まいづくりの羅針盤になるはずです。この記事がその羅針盤の参考になれば幸いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。藏岡三郎でした。

this is ME
藏岡 三郎
藏岡 三郎
一級建築士
設計歴20年以上の一級建築士
離婚を機にミニマリズムに目覚める。
現在小さなミニハウス(自宅)を設計中。
神社巡りが好き。自宅の神棚で朝晩お参りが日課。
記事URLをコピーしました