ミニマリスト設計士が住まいを設計する時に考えていること
皆さんが住まいづくりをする際、必ず登場するのが設計士です。間取りを考えるデザイナーの様なイメージでしょうか。実は設計士はデザイン以外にも様々なことを考えて提案図面をつくっています。私は設計業務を20年以上続けてきました。その中で習得した設計の7手順をこの記事では紹介します。この記事を読むと設計士がどんなことを考えているかがわかります。これから設計士の提案を受ける方は読んで頂くと、提案の理解度がさらに深くなるはずです。それでは始めていきましょう。
こんにちは。藏岡です。この記事では私が住まいを設計する時に実際に使う7つの手順をご紹介します。私の簡単なプロフィールは以下からお読み頂けます。
はじめに
私はこれまで大小様々な建物を設計してきました。小さな住宅から大きな福祉施設や商業施設までです。その経験から習慣化している手法が以下の7つの手順です。設計士にはデザイン感覚、センスが求められます。私もそれなりに日々鍛えているつもりですがそれと共に事実を積み重ねていく緻密さも必要だと考えてます。時には住宅会社の営業さんが描いた間取りやデザイン会社からの外観イメージを確認すると構造設計上破綻していたり建築基準法違反していることに遭遇します。そうならない様に外堀りから一つ一つ埋めていき最適な提案を一回目からだせる様に取り組んでいます。
土地の特徴を読み解く
土地の形と方角を確認する
住まいの陽当たりは土地の形に大きく影響されます。例えば南北に長い土地があった場合、北側に建物を寄せて建てると南側に広い庭が確保できるので陽当たりは良い住まいができますね。土地がどの方角に長い形状か、それとも不整形な形状かは建物をどの位置に配置するべきかの手がかりになります。
土地の周りの様子を観察する
どちらの方角に何があるかまたは何がないのかを観察します。南側に道路がある土地の場合は南側に建物が建つことはないのでずっと陽当たりがよい事がわかりますね。建物以外にも眺めの良い緑地や視線が遠くまでスーッと抜ける場所があると設計に取り入れます。その方向に窓があるとダイニングからの眺めがよい等様々な深度を出入りしながら手がかりを探します。土地を訪れる場合はこの観察時間を一番多くとりますね。
土地の高低差を観察する
高低差は現地に行かないとわからない事が多く、私が必ず設計前に土地を見る理由の一つです。お隣さんの土地が高いか低いかで陽当たりや視界の抜けに大きく影響します。また崖条例に該当するような急斜面の場合、建築可能範囲が狭まる為注意が必要です。
土地に関する法律・条例を確認する
建築基準法
日本で建物を建てる際の基本的なルールが建築基準法です。この中には建蔽率と容積率といった建物面積に関する法律や建物高さを制限する法律など本当に沢山の法律があります。当然これらを順守しないと違法建築物になってしまいます。建築可能範囲を土地ごとに決まっている用途地域によって確認します。素晴らしい設計ができても違法建築物になっては設計士失格ですね。
地域条例
建築基準法以外にも土地のある県、市、町によって地域の条例があります。お隣さんとの境界線から1m以上建物は離して建築しなさい。といったものや緑化面積(樹木や芝など)を土地面積によって一定基準以上確保しなさいという条例です。これらをクリアしないと工事を開始する前に必要な建築確認申請という手続きが完了しない為、建築基準法同様設計する前にチェックする必要があります。
眺めと陽光の抜け、庭、駐車場を考える
このステップでは①と②で得た情報をまとめて一枚の紙に書き込みます。どの方角に抜けがあって眺めがよいか、陽の光が一番長く確保できる場所はどの辺りで庭をとるならどの辺りか、道路との位置関係から駐車場はどの辺りか、建築可能範囲はどこまでかを網羅的にざっくりと考えておきます。ここまでを外側からの設計の手がかりとします。
予算から住まいの大きさを推測する
土地情報を整理した後に建物のステップに入ります。ここでは予算から住まいの大きさ上限を仮に決めます。例えば建物本体にかけられる予算が2500万円だったとします。坪単価が75万円と想定すると2500÷75=33.3坪となりますね。この予算は土地代や諸経費、外構費用、家具代は計上されていない建物本体部分のみになりますのでご注意下さい。坪単価は住宅会社等に坪単価中央値を問い合わせてみましょう。総二階建てと想定して33.3坪÷2階=16.65坪の建物を土地の中にどう配置するかを③でつくったシート上で検討します。
必要な部屋を整理して振り分ける
家族構成やライフスタイルから必要な部屋をリストアップします。多くの場合、リビング、ダイニング、キッチン、玄関、トイレ、洗面室、浴室、階段、主寝室、こども室がリストアップされます。それに加えて最近はランドリールームやパントリー、書斎や納戸が追加されることも多いです。
方角を基に振り分ける
リストアップした室を方角で振り分けます。南と東は陽当たりが良い事が多いのでリビング・ダイニングを、北や西は浴室や階段など一時的に利用する室を配置することが多いです。
階を基に振り分ける
同時にどの部屋を一階にするか二階にするかを考えます。もし一階の陽当たりが期待できない場合は、リビングを陽当たりが比較的よい二階にして主寝室や浴室などを一階に振り分けるなど提案します。
長く滞在する部屋を一番良い場所に置く
皆さんにとって一番長く滞在する部屋はどこでしょうか。私の場合はダイニングです。なぜなら朝と夜に家族と会話をしながら食事する時間が最高のエンターテインメントであり、幸せな時間だからです。家族によって違いはありますがその部屋を土地の中で一番良い場所に置きます。どこが一番良い場所かを判断するには③で作ったシートが活躍します。視線の抜けや陽当たりの良さから判断しましょう。
他の部屋を繋げていく
⑥で決めた部屋を手がかりに他の部屋を繋げていきます。例えばダイニングの近くにはキッチンがありますし、場合によってはパントリーもありますね。またミニハウスでは仕切りは最小限にしたいのでリビングも同じ場所に落ち着きます。このように他の室を繋げていきます。その際に必要な部屋の広さや動線の良さなど様々な要因から仕上げていきます。これらは一回で完成することはありません。作っては客観的に見て調整したり、場合によってはイチから作り直すこともあります。そうして考えに考え抜いた提案図をお客様に提示しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。設計士の設計プロセスは以外と地味で、考えをひたすらに積み重ねていくものではなかったでしょうか。なんとなくオシャレで流行っているからという設計や間取りは根拠が弱く、すぐに変わってしまいます。私の場合は強い芯の様なものの上にデザインがあるべきという姿勢で設計に向き合っています。これから各部屋の設計ポイント解説等を書いていきたいと思っていますのでご期待下さい。
最後まで読んで頂きありがとうございました。藏岡三郎でした。