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ミニマリスト設計士が気づいた「幸せな住まいに必要なお金」の不都合な真実

藏岡 三郎

みなさん、「人生の三大資金」という言葉を聞いたことはありますか?現代においては「教育資金」「老後資金」そして「住宅資金」と言われています。その中で私たちが若年層で出会うのが「住宅資金」だと私は思います。就職、結婚した後に子どもが誕生するとどこからともなく住まいづくりを始めなきゃいけない雰囲気が漂ってきて、誰も教えてくれないのに気付くと数千万円のローンを数十年単位で借りて次の月から返済することになっていた・・。よくよく考えると恐ろしい話だと思いませんか?この記事では設計歴20年以上の筆者が住宅業界の内側での体験を基に「住まいに必要なお金の不都合な真実」をお伝えしたいと思います。是非ともこれから住まいづくりを始める人に読んでほしい内容となっています。この記事を読むと「幸せな住まい」の為に必要なお金の知識が身につくはずです。それでは始めましょう。

藏岡 三郎
藏岡 三郎

皆さん、こんにちは。藏岡です。今回は「住まいのお金」をテーマにお話したいと思います。最近は少なくなってきましたが何故か日本では「お金」の話をしようとすると「卑しい」「汚い」などと周りから言われてしまいますね。しかしお金は自由に暮らすための土台だと私は考えています。しっかり向き合って後悔のないようにしていきたいですね。

住まいづくりに必要なお金とは

皆さん、「住まい」っていくら位するんだろう?考えたことある方も多いのではないでしょうか。中には「30坪の家だとして坪単価100万円なら3000万円だ!貯金が1000万円あるから2000万円借りよう。」こんな風に考える方いらっしゃるかもしれません。しかし残念ながらそんなに単純ではなくて、建物本体費用以外にも建物を建てる前の地盤調査費用や建築確認申請手数料や契約書印紙代なんてものもあります。少し頭がクラクラしますが下の「藏岡式予算管理シート」は私が実際に業務で使用しているものです。
皆さん、「住まい」っていくら位するんだろう?考えたことある方も多いのではないでしょうか。中には「30坪の家だとして坪単価100万円なら3000万円だ!貯金が1000万円あるから2000万円借りよう。」こんな風に考える方いらっしゃるかもしれません。しかし残念ながらそんなに単純ではなくて、建物本体費用以外にも建物を建てる前の地盤調査費用や建築確認申請手数料や契約書印紙代なんてものもあります。細かな項目が並び目がチカチカしますが下の「藏岡式予算管理シート」は私が実際に業務で使用しているものです。全体像を把握するために参考にしてもらえればと思います。
左側が支出部分で6項目から構成されています。右側は収入部分です。頭金と借入額を記入します。金利から毎月の返済額まで把握することができます。

住まいの予算管理で気を付けて頂きたい事は「建物本体以外にも沢山の項目があるということ」と「住宅会社は項目を小出しにする」ということです。A社とB社で相見積もりをとってみたところA社の方が総額が安かったので契約をした。しかし契約後にA社と打合せを進めていくと「〇〇の項目は契約に入っていません。追加になります。」と告げられどんどん支払い予算が上がっていく・・。これはあるハウスメーカーで建てた私の友人の話です。会社によってどこまで見積書に計上するかはバラバラなんですね。その為、見積書を受け取った時は表紙の金額だけで判断せずどこまで見積もり書に含まれているかをちゃんと確認するようにしましょう。

住宅業界の不都合な真実5選

住まいづくりに必要なお金・予算の全体像を把握したところで住宅業界の不都合な真実を5つお伝えします。これらは住まいづくりをしている、またはしようとしているお客様に住宅業界の人たち(私を含めて)は隠したい真実。これら全てが毎回行われているとは言い切りませんが実際に私が目にしてきた事実である事は確かです。注意喚起と理解いただいて読み進めてもらいたいと思います。

不都合な真実①

営業マンは「幸せな良い住まい」ではなく「値段が高い住まい」を売りたい
家を建てようと住宅展示場を訪れるとニコニコと笑顔で現れるのが住宅会社の営業マンです。私は以前大手ハウスメーカーで勤務した経験がありますので内側から見てきました。彼ら営業マンの多くは1棟契約を成立させる度にインセンティブ報酬が入る仕組みで雇われています。沢山契約すれば沢山報酬がもらえる仕組み。つまり効率よく値段が高い住まいを売る事を目指しています。お客様・住み手の経済状況を知って住宅ローン返済額に無理があっても、予算がオーバーしていても止めることはありません。高ければ高いほど利益が残りやすくなる為です。

不都合な真実②

<銀行職員は銀行に有利な条件で長期間かつ多額の住宅ローンを組ませたい>
憧れの一軒家。非常に高価ですよね。現金で一括購入する人は一握りの人のみ。多くの方は銀行等金融機関で住宅ローンを組んで代金を支払います。金融機関に行くとビシッとしたスーツで現れる銀行職員。「自宅を建設したい」と伝え彼らに住宅ローン仮審査を依頼すると「○○様の資産状況・勤続年数・勤務先など審査したところ金利○○%で〇〇〇〇万円融資可能です」と真剣な表情で提示してくれます。ここで勘違いしてはいけません。「融資可能額」=「返済可能額」ではないんです。「えっ!?銀行さんが貸してくれるって言ってるんだから大丈夫でしょ?」残念ながら違います。銀行は金利商売。どうにかして有利な条件で長期間にわたり住宅ローンを組ませて金利分を沢山受け取ろうとします。借り手の都合は二の次。金融機関によって異なりますが一定の割合で返済できず自己破産するケースがあることを想定して貸し付けているのです。その返済額が無理なく返せるかどうか判断するために必要なことは記事後半に記述したいと思います。

不都合な真実③

<無料で住宅資金相談をしてくれるファイナンシャルプランナーは保険を売りたい>
お金のプロというとどんな職業が思いつきますか?銀行員かファイナンシャルプランナーではないでしょうか。住宅会社に注文住宅の相談にいくと「先ずはファイナンシャルプランナーに住宅資金相談されてみては?無料ですから受けておいて損はないですよ。」と案内されることがあります。この無料相談で登場するファイナンシャルプランナー、かなり要注意です。彼らは「住宅資金の相談にのってくれるファイナンシャルプランナー」ではなく「ファイナンシャルプランナー資格の仮面をかぶった保険営業マン」です。相談すると一応、ライフプランシートや資産状況の推移等資料を作成してくれますが、その上でほぼ100%の確率で保険の見直しを提案され貯蓄型保険を薦められます。私も過去に数十万円損をした経験があります。つまり彼らは無料の「住宅資金相談」を入口に自分達に潤沢な報酬が入る保険商品を売りたいだけなのです。「住宅資金相談」はメインの目的ではないので精度が低く、残念ながら期待できない内容であることがほとんでです。

不都合な真実④

<大手住宅会社に依頼をしても実際工事するのは地場の下請工務店・大工さんです>
テレビCMを沢山流し、全国展開している憧れの大手住宅会社。坪単価は100万円を超える会社も珍しくありません。大手はどんなスーパー大工さんが工事してくれるのでしょうか?しかし全国展開している様な大手住宅会社は社内に大工さんを雇っているケースはほぼありません。各地域の工務店に工事を外注しています。ただし現場監督は社内に正社員として雇用しているケースがほとんど。現場監督の仕事は工事日程管理や材料発注などで実際に工具を扱って家を建てることはありません。つまり実際に工事している職人さんは大手住宅に依頼しても、地場の工務店に依頼しても変わらないということなんです。完成する家のクオリティは変わらない。でも工事代金は高い。。この差額は一体どこに消えているのでしょうか?これはハウスメーカー社内のバックスタッフの人件費、テレビCMなどの宣伝広告費、一等地に借りているオフィスの賃料等に充当されています。皆さんはそれでも大手住宅会社で住まいを建てたいですか?詳しくは以前書いた「施工者」についての記事をご参照下さい。

設計士が自宅を建てる時に選ぶ施工者とは?
設計士が自宅を建てる時に選ぶ施工者とは?

不都合な真実⑤

<無料の住宅会社紹介は皆さんの建設資金で成り立っています>
ショッピングモールに窓口がある無料住宅会社紹介サービスやスーパーマーケットで無料配布している住宅専門のフリーペーパー。これらからは様々な住宅会社の情報を無料で得る事ができるので活用している人も多いのではないのでしょうか。オシャレな建物写真や間取りが掲載されていて見ていると楽しいですよね。無料で住宅会社を紹介してもらえるなんてなんてお得なサービス!と思いますがこれにも実はカラクリがあります。住宅会社はフリーペーパーや紹介リストに自社を載せる為に安くない広告宣伝費を支払います。そしてその広告宣伝費は皆さんが支払う建設資金から捻出されます。つまり住まいの実際の建物原材料費に広告宣伝費が上乗せされて皆さんに請求されているという事なんです。結局は皆さんの建設資金でこれらサービスが成り立っているということなんですね。仕組み上、無料の紹介サービスは成立せず誰かしらが負担しなければならないのです。

幸せな住まいのためにできること

それでは幸せな住まいの為に私達ができることは一体何でしょうか?
「勉強」
この一言に尽きます。私達が幸せな住まいを得るためにできること、それは「勉強」です。数年前に私も深く考えずに欲するままに自宅を建設した経験があります。幸運がかさなり損失を最小限に留められましたが住宅購入(特に一戸建て注文住宅)は「浪費」の一部であることを理解する必要がありますし、社会人になってある年齢になったら必ず買うものではありません。「不動産」や「税制」「社会保険」の知識もですが「お金」全体の勉強も大切です。私が薦めたい「勉強」は以下の3点です。

・ファイナンシャルプランナー3級資格勉強
不都合な真実③で登場したファイナンシャルプランナー。そうです。あなた自身がファイナンシャルプランナー3級の資格をとるのです。ファイナンシャルプランナー3級の知識は現代日本を生きるための基礎教養といっても過言ではありません。義務教育の必須科目にした方がよいとさえ思っています。資格勉強でどんな事が学べるかはこの後詳細を記載致しますね。残念ながら保険を売りつけない真っ当なファイナンシャルプランナーに会える確率は現在はかなり低いのが現状です。それよりご自身で勉強するのがよほど近道です。勉強をした上で家計管理をすると無理のない住宅ローン返済額が見えてきて正しい判断ができるようになります。自習が苦手な方は下記のリンクの様なFP講座を申し込んでみるのもよいかと思います。
■クレアール
 https://www.crear-ac.co.jp/fp/

読書
読書は最強の自己投資。インターネットやSNS上の情報はスピード感はありますが信頼性が低いものもあり玉石混交です。紙の本は筆者だけではなく編集者や出版元も協力があって私達の手元に届きます。その為、信頼性が高いだけでなく筆者が数年、数十年かけて得た経験や知識を千円少しで触れる事ができるコスパ・タイパのよい素晴らしい勉強法です。私のおすすめ書籍を3冊紹介させて頂きます。

本当の自由を手に入れる お金の大学 [ 両@リベ大学長 ] 楽天で購入

史上最強のFP3級テキスト 23-24年版 [ 高山 一恵 ] 楽天で購入

家庭の金銭学 [ リック・イーデルマン ] 楽天で購入


・YoutubeやVoicy等音声メディア活用して隙間時間に「ながら勉」
「勉強」といっても机に座ってカリカリと学ぶだけが勉強ではありません。通勤時間や家事をしながら「耳」からインプットしてみましょう。下記の3つは全て基本無料です。(途中CMが入りますが)短時間でも、〇〇しながらでも、コツコツと継続して積み重ねていくと大きな変化が生まれるはずです。というか私は生まれました!!

 ■リベラルアーツ大学
  https://www.youtube.com/@ryogakucho
書籍でも紹介した両学長のYoutubeチャンネルです。私たちが知っておくべき「お金」の知識を網羅的に発信しています。沢山の動画がありますので気になったテーマから見始めてみましょう。毎朝のLive配信もお薦めです。

 ■ほんださん/東大式FPチャンネル
  https://www.youtube.com/@HondaFP
私がファイナンシャルプランナーの勉強をする際に活用しました。テキスト勉強の前に全体概要をつかむために通勤中の車の中で聞いていました。ざっくりと全体像をつかんでからテキストで勉強すると理解のスピードが上がりました。

 ■ながら日経(Voicy)
  https://voicy.jp/channel/865
音声メディアであるVoicyが毎朝日経新聞の記事から厳選して音声で発信しているチャンネルです。毎朝聞き続けることで様々な事柄が繋がり始めます。一般常識・基礎教養として有効だと思います。

なぜファイナンシャルプランナー資格が必要?

ファイナンシャルプランナーは、家計にかかわるお金、税金制度、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度など幅広い知識を学んだ専門家です。 これらの知識を活かして相談者の目標達成のプロセスを一緒に考え、サポートする事が、FP(ファイナンシャル・プランナー)の役割です。なぜFP資格が必要かと言うと資格勉強を通して「お金」の知識を体系的・網羅的に学ぶことができるからです。

FP資格試験はどんな事を学ぶのか

ライフプランニングと資金計画

ライフプランニングとは文字通り人生の計画書をつくることです。〇〇年後に第一子誕生、自宅建設、子の大学進学などライフイベントをリスト化しそれに必要な資金計画をたてます。その為に必要な社会保険制度(公的保険制度)の仕組みや内容を学びます。

リスク管理

人生には様々なリスクがあると言われています。病気リスクや事故リスク等ですね。これらリスクに対して備えるのが保険です。日本の公的保険を制度を理解した上で本当に必要な民間保険で補う視点が大切。医療保険、がん保険もこの分野で学習します。

金融資産運用

金融資産・・なんだか難しくて近寄りにくい領域ですね。ここでは金融・経済の基本から株式、投資信託、債券といった金融商品について学びます。新NISA制度も2024年に始まり政府は本格的に国民に投資することを求めています。投資はギャンブルではありません。ちゃんと学べば心強い味方になってくれます。

タックスプランニング

タックスとは税金のことです。この章では所得税制度の仕組みと内容を中心に学びます。多くの方が会社に言われるがままに天引きされている税金について体系たてて網羅的に学ぶことができます。

不動産

不動産とは土地や建物など「動」くことが「不」ない資産です。どのように売買され、そのためにどのような契約が必要か。それに伴う税金などについて学びます。住まいを建設する前に学んでおきたい知識です。

相続・事業承継

多くの読者の皆さんにとって相続・事業承継分野はまだ縁遠いお話かもしれません。しかし自身が相続する側になる可能性は充分にあり、相続がどのような法律を根拠にしているか、または相続税・贈与税について知っておくことは決して損ではありません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は幸せな住まいの為に必要なお金についてお話しました。不都合な真実5選の部分は少しショッキングな内容だったかもしれませんね。しかしこれら知識を知っているのと知らないのでは対応方法に大きな違いが生まれます。当然ではありますがビジネスはビジネスでありボランティアではありません。適正な利益を確保することは私も大いに賛成です。一方で購入者の無知を利用してボロ儲けする姿勢はものすごく反対です。私も家を建てたいと言われ相談にのった若い夫婦に対して「今はまだ時期ではないから家計を見直して、不安要素を減らしてから家づくりを始めましょう。」とやんわりとお断り、時期を遅らせた経験があります。やはり住まいづくりは「建てて終わり」ではなく、その後の暮らし方まで考えるべき。家がピカピカでも毎月のローン返済が苦しいと生活が荒んでしまいます。皆さんにはそうなってほしくないので今日の内容をお話させていただきました。勉強を通じて確かな情報・知識を身につければ騙されたり、いい様に利用されることも避けられます。今日が人生で一番若い日です。「幸せな住まいの為のお金の知識」を身につける第一歩を踏み出しましょう。最後まで読んで頂きありがとうございました。藏岡三郎でした。

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藏岡 三郎
藏岡 三郎
一級建築士
設計歴20年以上の一級建築士
離婚を機にミニマリズムに目覚める。
現在小さなミニハウス(自宅)を設計中。
神社巡りが好き。自宅の神棚で朝晩お参りが日課。
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