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【ココを見る】ミニマリスト設計士が見る土地選びのポイント7選

藏岡 三郎

今回は自分らしい住まいを実現する際に大切な「土地」についてお話したいと思います。実は土地条件は住まいを設計する重要な手がかりになります。なぜなら陽当たりや眺めの良さ等はそれぞれの土地固有の特徴であり、同じ特徴はないからです。私は20年以上の設計歴の中で様々な条件、カタチの土地を見て設計してきた経験があります。この記事ではその経験を活かして実際に行った土地の探し方が学べます。この記事を読むと土地の見るべきポイントがわかるようになります。

藏岡 三郎
藏岡 三郎

皆さん、こんにちは。藏岡です。住まいを建てるのに絶対に必要な土地。この土地の選び方って何を見たらよいかわからず迷っていませんか?この記事はそんなお悩みを解決します。

土地に関する基礎知識

都市計画区域、用途地域、市街化調整区域

日本の土地は「街にするエリア」と「街にしないエリア」が決められています。これを「都市計画区域マスタープラン」といいます。このマスタープランによって計画的に住宅エリアや工場エリアなどの開発が進められます。駅周辺は賑やかになる様に建物を建て、郊外は建設自体を制限するといった考えです。「都市計画区域マスタープラン」は大きく「都市計画区域」「準都市計画区域」「都市計画区域外」の3つにエリアが分けられます。さらに「都市計画区域」の中で「市街化区域」と「市街化調整区域」の2つに分けます。「市街化区域」は文字通り市街にすることを進めている区域なので多くの場合、建築確認を申請すれば建物を建てることができます。一方「市街化調整区域」は市街にすることを調整している区域の為、条件にあう建物だけ建てることができます。「市街化区域」の中では12種類の用途地域が割り当てられています。用途地域により住宅エリアと工場エリアと商業エリアを分けて効率化、環境整備をしています。以下がその12種類の名称と大まかなルールです。

第一種低層住居専用地域  
主に低層住宅のための地域。他に小規模店舗や事務所兼住宅や、小中学校等が建てられます。
第二種低層住居専用地域
主に低層住宅のための地域。小中学校等のほか、150㎡までの一定のお店などが建てられます
第一種中高層住居専用地域
中高層住宅のための地域。病院、大学、500m2までの一定のお店などが建てられます。
第二種中高層住居専用地域  
主に中高層住宅のための地域。病院、大学などのほか、1,500m2までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられます。
第一種住居地域  
住居の環境を守るための地域です。3,000m2までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられます。
第二種住居地域  
主に住居の環境を守るための地域です。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられます。
準住居地域  
道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。
近隣商業地域  
まわりの住民が日用品の買物などをするための地域です。住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。
商業地域  
銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域です。住宅や小規模の工場も建てられます。
準工業地域  
主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。
工業地域  
どんな工場でも建てられる地域です。住宅やお店は建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。
工業専用地域  
工場のための地域です。どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。

これら用途地域ごとに細かく建物の高さ上限や建ぺい率、容積率が定められています。この用途地域はその土地がある市や県のホームページ等で  調べることができます。また土地情報のチラシやサイトにもこの用途地域が記載されているので確認しましょう。  私の場合は、現地を確認した帰り道に市役所や水道局、道路管理事務所など複数機関を直接尋ねて敷地調査をすることが多いです。疑問はその場で職員に聞けるので解決が早く済むためです。全ての名称やルールを覚える必要はありません。土地にはこういった決め事があるということを覚えておくと土地探しがスムーズに進みます。

用途地域建築制限

それでは次に上記の用途地域ごとに決められた建築ルールについて細かく説明します。  代表的なものに建蔽率と容積率があります。建蔽率とは、その土地に建物が占める面積を換算しその割合をパーセントで表したものが建蔽率となります。たとえば、上空から建物をみた際の面積が100㎡で、土地面積が200㎡の場合、建蔽率は50%となります。  容積率とは、建物の延床面積に対する敷地面積の割合を示すものです。建物の延床面積とは、建物内部の一階と二階の床面積の合計です。具体的には、延床面積を敷地面積で割り、その割合をパーセントで表したものが容積率となります。たとえば、一階と二階の延床面積の合計が200㎡で、土地の面積が400㎡の場合、容積率は50%となります。  それ以外に注意頂きたいのが建物の高さを制限する北側斜線制限、道路斜線制限、隣地斜線制限、高度斜線制限です。これらは少し専門的すぎるのでここでは詳細を割愛しますが 土地によっては3階建てが難しい等といった高さに関するルールがあるということを認識しておきましょう。

土地探しの前にしたこと

どんな土地がよいか話し合う

土地選びの際に優先する項目を決めておくこと。どんな環境で暮らしたいかを話し合うことです。私達の場合は以下の様になりました。 ライフスタイルによってそれぞれの家族で考え方は異なりますので是非一度時間をとって話し合ってみてください。

  • 静かで緑が豊かな環境であること
  • 駅までの距離が適度に遠いこと
  • 価格が抑えられていること
  • 日当たりと風の抜けがどこかにあること

インターネット下調べ

現在、私達のアパートがある市は都心部から電車で60分程度の郊外にあり、整備が近年進んでいる市です。人口減少時代には珍しく市人口は微増を続けており、街にでると若い世代(20代~30代)が多い様に感じます。以上の基礎情報から私達が高齢になっても  ある程度の都市機能は維持できるだろうと予測しました。その上で大きな幹線道路計画地や都市計画情報をチェックしておおよそのエリアを絞りこみ、同時にハザードマップで災害リスクも確認しました。

設計士が見ている土地のポイント7選

立地環境

先ずは周囲に何があるかを確認します。お隣りに何が建っていて何階建てなのか、家か工場か商店といった建物種類も大切ですね。何か臭いはするか、騒音はないかに影響があります。また視線がスーッと抜けるような広がりがどこかにあるか、陽光が入ってきそうな空地はないか探します。これらは有効な設計の手がかりとなります。下の記事の設計手法はこれらの手がかりからスタートします。

ミニマリスト設計士が住まいを設計する時に考えていること
ミニマリスト設計士が住まいを設計する時に考えていること

方角

次に方角を見ます。土地に対してどの方角に道路があるのかはとても大切です。道路には建物が建つことはありません。つまりほぼ永久的に道路のある方角は空地となり 陽光が期待できる方角となります。そのため南側道路や東側道路の土地は人気があり価格も相場より高くなる傾向にあるのです。道路以外にも南と東に何階建ての建物があるか、または建つ可能性があるかをチェックします。新しい建物でしたらよいのですが、古い空き家だった場合は建て替えられる可能性が数年以内にあるのではと考えます。この立地環境と方角を観察すればおおよその建物配置計画を考えることができます。どこに空地をとり、大きな窓をとるのか決定します。

道路幅

3番目は道路の幅です。建築基準法には土地は4m幅の道路に2m以上接していることと定められています。そのため前面道路が幅4m以下の場合は道路の中心線から2mの距離まで敷地をセットバックする必要があります。そのセットバックラインから駐車場スペースを確保します。この時、車の入出庫もシミュレーションをしておきます。車がお好きなお施主様の場合は車種までお聞きすることもあります。

インフラ整備状況

次も道路に関しての項目です。インフラとは上水道、下水道、ガス管、電線を指します。せっかく土地に自分らしい家を建てても水道や電気がなければ生活することはできません。そのため前面道路にインフラがあるのか、ないのかで総額コストが大きく変わります。前面道路まで下水管が整備されていれば引き込むだけで済みますがない場合は道路を広範囲に掘り返して工事する必要があります。これは公共工事になるため時間もコストもかかる工事になるので注意が必要です。総額コストから建物規模を逆算するためこの段階で把握するようにしています。

高低差

土地の高低差は紙チラシではわかり難い特徴です。敷地の中で高低差がある場合は平らに造成するか、または現状の平らな部分だけで建設するか判断が必要です。造成工事はコストアップの大きな要因の一つですので注意が必要です。さらに注意するのが「がけ条例」と呼ばれる条例です。これは一定の高さ以上の高低差があると「がけ」と判断され、決められた離隔距離を確保して建物を建設するか、基礎を深く工事する必要があります。先ずは建設可能な範囲を把握し、その中で設計することを考える様にしています。

地名

これは以外かもしれません。地名です。地名は古くからつけられている名称でありその土地の特徴を指す事があります。由来ですね。地名に「水」や「川」に関する漢字が入っている場合はその土地が昔は川や水田だった可能性があります。水田を埋め立てた土地は表層土が柔らかい傾向があり、地盤補強工事を必要とする可能性があります。工事の前に必ず地盤調査を行いますが周囲の地盤情報は調査会社に調べてもらうことができます。よい判断材料になりますので問い合わせをしてみましょう。

地質

最後は地質です。東日本大震災時に地盤が液状化現象を起こして建物が傾いた現象が起きましたね。これは地質が大きく関係します。緩い砂地の場合、液状化リスクが高まりまることが研究で明らかになっています。近くに川がある場合は特に注意しておりまだ購入前の場合は見送る様に助言した経験もあります。関東地方の場合は関東ローム層はよいとされていますね。もし親族の土地に建設する場合は親族の方に聞いてみるのもよい方法かと思います。

これは設計には関係しないので番外編になりますが、周囲にどんな方が住んでいるのか推測する方法を3点挙げておきます。参考になればと思います。それは「どんな車が停まっているか」「ゴミ置場は散らかっていないか」「政党看板を掲げているか」です。  どんな車かとは派手にカラーリングされた改造車や街宣車などですね。ゴミ置場や看板からは民度や思想の強さが推測できます。

実際にした土地探しの方法

①インターネットで検索(エリア選定)  

家族会議後にまずはインターネットで地名、おおよその位置関係(駅、学校、公園、スーパーマーケット)を調べて  エリアを選定しました。私の場合はアットホームのエリア検索を使い、そのエリアの売り土地情報を定期的にチェックしました。

②車で見に行く(広範囲)

いくつか候補地を決めたら車で見に行きました。この時は土地から駅までの距離や学校までの距離などを測りました。ルートに危険な場所はないか、歩道があるかなどを確認しました。

③自転車で見に行く(中範囲)

そこから候補を絞ったら自転車で見に行きました。車に自転車を積んで移動し、自転車で周囲を回ってみます。そうすると実際に体感する坂や道の高低差や臭いと騒音も観察することができます。私は実際、近くにたい肥工場があることに気づき 候補から外した経験があります。車では窓をあけてない限り気がつかないことでした。

④歩いて見に行く(狭範囲)

ここまで来たら不動産屋さんに連絡をとって実際に現地を確認しました。立地環境、方角、抜け、道路幅、地質、高低差、道路幅、インフラ整備状況をチェックしましょう。 また雨の日と夜に見に行くことも大切です。良い時ではなく不利な状況でもチェックするのも忘れない様にしましょう。 大雨で側溝があふれていることや夜の街灯の少なさなど気づくかもしれません。

決定した土地

以上から私が見つけた土地は以下の土地になります。  

  • 市街化調整区域 228.00㎡(68.96坪)
  • 北側道路 幅員3.6m
  • 駅まで自転車で5分の距離
  • 価格360万円
  • 緑が多いエリア
  • 周囲に住宅が建っており生活インフラが整備されていた
  • 高速道路の乗り口が近い

まとめ

いかがでしたでしょうか。土地選びのポイントは見つけられましたでしょうか。 以上7つのポイントを参考にして、より良い自分らしい住まいの土地を選びましょう。 引き続き今回決定した土地にどんな家を設計していくか発信していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。藏岡三郎でした。

this is ME
藏岡 三郎
藏岡 三郎
一級建築士
設計歴20年以上の一級建築士
離婚を機にミニマリズムに目覚める。
現在小さなミニハウス(自宅)を設計中。
神社巡りが好き。自宅の神棚で朝晩お参りが日課。
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